※作品画像はすべてArtist Group-風-2014年第3回展より
日本画家の中島千波、中野嘉之、畠中光享らで結成された「Artist Group-風-」は、7メートルの大作を公募することが大きな特徴となっている。2012年に設立されたばかりのこの新しい団体は、美術の世界にどのような風を吹かせるのか。主宰のひとり、中島千波に話を聞いた。
設立時の思いを持続するために
- 「Artist Group-風-」には前身となる別の団体がありました。4人でのスタートでしたが、人数がしだいに増えるなかで、設立の趣旨がぼやけてくるのを感じました。あとから参加する人がお客さんのようになってしまい、気持ちを共有できない。このままではよくないと、15年の節目を機に解散しました。
- 公募団体は、どこか会社の運営に似ています。創業者は組織の核となる信念をもっている。でも、新入社員が入り、代表者が変わり、さまざまな役職の人たちが入れ替わるなかで、創業のときにあった思いは薄らいでいく。公募団体にも設立して百年というところもありますが、私は年数には価値がないと感じます。設立当初の奮い立つような気持ちを維持できないなら解散するべき。そう思い、「Artist Group-風-」を再び少人数ではじめました。
- たくさんの人に注目してもらいたいけれど、団体の規模は大きくしません。そのために7メートルというサイズや、45歳以下という応募資格を設けています。卒業制作の出品も不可です。
- 私たちの設定したハードルは高い。だからこそ、そこを乗り越えてくる人たちとは、同じ思いで創作活動に携われると思うのです。
(左)中島千波 《existence-'14-9-chi-L》四曲一双屏風 172.0×342.0cm
(右)中島千波 《existence-'14-9-chi-R》四曲一双屏風 172.0×342.0cm
(左)中野嘉之 《千尋の滝》 220.0×110.0cm
(中左)中野嘉之 《隠滝》 220.0×110.0cm
(中)中野嘉之 《ニコニコ滝》 220.0×110.0cm
(中右)中野嘉之 《無名の滝》 220.0×110.0cm
(右)中野嘉之 《七ッ釜滝》 220.0×110.0cm
畠中光享 《清らかな平静と安らいを得て犀の角のようにただ独り歩め-スッタニパータより-》 二曲一双屏風 172.0×182.0cm×2
作家の器
- 古い団体に属していない人、また属したくないと思っている若い作家を掘り起こしたいという気持ちがあります。応募資格は45歳以下。でも僕自身は、ほんとうは35歳以下まで絞ってもいいと思うのです。
- 厳しいようですが、美術大学を卒業する24、25歳から10年程度でものにならないなら、一生ものにならないと、経験から感じます。35歳までに何かの賞を取れるかどうかが、その後作家になれるかの最初の分岐点です。
- そういう意味では「大器晩成」という言葉は誤解されていますね。晩年からその人のもつ器が大きくなることはないんです。大成する人は、たとえ完成するのがゆっくりだとしても、最初に大きな器をもっているはずです。「Artist Group-風-」では、45歳までにその器の大きさを感じさせてくれることを期待しています。
立尾美寿紀 《カンナ、カンナ》 182.0×700.0cm
金子富之《怖畏金剛》 227.0×640.0cm
木下めいこ 《輝跡》192.0×632.0cm
大作にこだわる理由
- 10メートルにしたかったけれど、会場の大きさから計算したら入りきらないので最大幅7メートルになったんです(笑)。
- なぜそんな大きさを求めるかというと、純粋に絵を描いてもらうためです。若いときこそ、大作に取り組んだ方がいい。その経験が糧になります。
- 絵画はもともと好きで始めるはずで、最初から食べるために描く人はいない。ある程度以上の大きな絵は、懸命に、五感を研ぎ澄ませて絵と向き合わないとつくれません。もともとの純粋さに、どうしても立ち返らざるを得ないのです。
- 私自身、出品作のようなサイズを売れると思っては描いていません。販売を前提としない絵なのです。たとえば桜のモチーフでも、いやいや描くと、いやな桜になります。絵は正直です。販売のことを考えながら描けば、お金がほしいような絵になる。「風」で賞金を設定しないのも同じ理由です。
- 一方で、若い人にどうやって絵の世界で生きていくかを教えていくことも、自分たちの役割だと感じています。
- 「風」での入選者には、日本橋髙島屋美術画廊でのグループ展の機会を用意しています。さすがにその会場には7メートルの作品は持ち込めません(笑)。公募展では、その人のもつ可能性を最大限、存分に見せてほしい。その先に、小品展でお客さんに買っていただくための作品があればいいと思います。
- 創作の純粋な気持ちで、清新な、荒々しい、心地いい風をともに吹かせてくれる仲間の参加を期待しています。
(取材・構成=竹見洋一郎)
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