女流画家協会
女性が輝き、のびやかに自己表現できる社会へ

2017/12/12
昭和22年、戦後間もない日本において、女流画家11人の発起人により創設された女流画家協会。
以来、今日に至るまで女流画家の活躍を支え続け、美術を介して女性と社会をつなぐ役割を担ってきた。節目の70周年を迎え、今後の会の在り方についてどのようなビジョンを描いているのか。現在の活動と併せて、事務所代表・佐々木里加、会計・伊藤育子の両氏にお話をうかがった。
美術を、暮らしにもっと身近な存在にするために
――まず、女流画家協会の発足の経緯と掲げている目標について教えてください。
佐々木
:
女流画家協会は、女流画家の地位向上を旗印に設立されました。女性が輝く時代などと言われていますが、例えば日本の政治の世界では国会議員の数が世界の平均を大きく下回っています。私は今回、文化芸術をもっと行政に絡めるべく、女性の国会議員の増員を標榜した政治塾から選ばれて、衆議院議員選挙に出馬しました。
:
私は元静岡県会議員で静岡県会議では初の女性議長を務めました。私は113代目でしたが、113年で初の女性議長だったんです。いまだにそういう時代で、女性は切り拓いていかなければならない道がある。政治も美術も。女性がもっと要職に就かなければと思っています。
佐々木
:
一例ですが、国会議員の中にスポーツ選手はたくさんいますが、画家はいません。スポーツに比べ、芸術という世界が一般の方々にとって身近でないということにも原因があると思います。しかし本当は、心の豊かさを得るためにも芸術は必要なものです。その理解を深めるためにも、美術関係者が直接政治の世界に入ることは意義があると思います。文化芸術と行政の絡みの点で、欧米に比べ日本は残念ながらだいぶ遅れているのが現状です。
佐々木里加 女流画家協会事務所代表 《 BRAIN SPACE 》
伊藤育子 女流画家協会会計支出《 去年のできごと 》
――創設70周年を迎えられましたが、女流画家協会の歴史にまつわるエピソードはありますか?
佐々木
:
初期の方で、創立メンバーではないですが、私の中学の美術の先生が水野恭子先生という、女流画家協会で委員だった方です。先生からうかがったお話ですが、戦後は絵を描くためにとても苦労され、崖で海の方に向かって絵を描いていただけでスパイだと思われ聴取されたそうです。そういう時代だったんですよ。
:
苦難の時代を経て今日があるからこそ、大事に次の世代に語り継ぎ、託していかなければと思いますよね。
佐々木
:
その先生と一番仲が良かったのが、やはり女流画家協会の委員で桜井浜江先生。太宰治さんとの文化的な交流があった方で、太宰治が描いた「饗応婦人」のモデルはその方です。当会の先達は、その時代の一流の文化人同士のお付き合いがありました。そうした由緒ある歴史の上に成り立っている会です。
――会は、創作活動を続けていくためにも大事な存在ですか?
:
そうですね。続けていくことが大事だし、それには仲間がいることが大事。一年に必ず一度は東京都美術館に出品する、それが励みとなり、よいサイクルとなります。目標を定めて自分に課すということも大事なんですよ。自堕落にならないためにも。現在、委員の中には、今年101歳になられた、今も元気に毎日絵を描かれていらっしゃる方もいます。101歳で検索すると「101歳の画家」で直ぐ出ますよ。
佐々木
:
研究会という、出品希望者や出品者が切磋琢磨する場があり、希望者は入れます。委員には委員会があり、少なくとも一カ月に一回は皆さんが集まります。今年の展覧会中、ニューヨークからいらした17歳のお嬢さんが、女流画家協会展の前をたまたま通りかかって「ぜひ見せてください」と言われ、無料のワークショップにも参加していただきました。そして「ニューヨークから来年ぜひ出します」と言ってくださったんですよ。嬉しいことです。
柔軟かつしなやかに、多様性を受け容れる
――より広く、多くの方が出品できるよう、会として工夫されていることはありますか?
佐々木
:
2018年募集の第72回展から、年齢制限の枠を取り払い、女性でしたら何歳からでも応募できるようになりました。そして、サイズも10号以上またはA2以上ならば受け付けます。お子様も大歓迎。25歳以下は、出品料は3点迄5,000円です。東京都美術館に自分の描いた絵が飾られます。素材や手法は自由。イラストや漫画的な絵を描いて応募される方も増えています。若いお嬢さん方で、お家にいる方で、絵を描くのは好きだけれど人と接すのが苦手という方も、ぜひ描いて出品していただきたいですね。漫画的な絵でいい。いわゆるサブカルチャーも歓迎します。
:
今はサブもメインもない時代ですから、多様性を我々自身が受け入れる必要があると思っています。当会の面白いところは、委員はいろいろな会から各団体のトップが集まってきているんですよ。つまり、各会それぞれの流儀で創作活動をされている方の集まりなので、非常に多様性がある。そういう意味では、当会は団体内で一番面白いステージだと思います。
――佐々木先生、現在、東京都美術館で企画展に選出されていますね。
佐々木
:
東京都美術館は、もともと団体展の展示と歩みを共にしてきた施設です。「現代の写実―映像を超えて」という展覧会で、一応各団体から一人ずつ、当会からは自分が出ています。私は5.3m×2m、4.5×3m、F100号の3点を吹き抜けの大きなギャラリーに飾って頂いています。結局、美術館の学芸員により選抜された企画展なので、風通しがよく、展覧会そのものがプロの見せ方になっています。女流画家協会のパワフルな長所を、今回自分が代表して見せなければと思っています。
上野アートプロジェクト「現代の写実―映像を超えて」展
程:2017年11月17日(金)~2018年1月6日(土)
場:東京都美術館(東京都上野公園内)ギャラリーA・C
開室時間:9:30~17:00金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
観覧料当日券 | 一般 500円 / 65歳以上 300円(学生以下無料)
※同時開催の「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」のチケット(半券可)提示にて入場無料
:
女性もどんどん自己主張しなければ生きていけません。でも、しなやかでなければ。しなるけれども、決して折れないで立ち上がる。そこが大事ですよね。女流画家協会はこのように大変パワーのある団体です。
佐々木
:
女流画家協会は、伝統も格式も力もある美術団体です。女性がますます元気に輝いて活躍できるよう、皆で力を合わせて実現する団体ですので、ぜひ展覧会のご観覧にお越しください!
(取材・構成=杉瀬由希)
第71回 女流画家協会展作品より(解説は事務所)
黒沢裕子 女流画家協会会計収入《 空の名 》
左 吉江麗子《夢見る青い果実’07+’17》今年92歳の委員である作家は好評の為、来年第72回展でもワークショップを行う。
右 岩瀬ゆき《Couronne de glace》見るからに楽しく美味しそうな作品。スイーツデコの巨大版です。
左 中嶋紀子《天使の誕生》色の塗り方や画面構成に見えない工夫が施されている反面、非常にキャッチーな作品でもあります。
右 山岡貞子《約束Ⅱ2017》白黒の配分も構図も絶妙。外連味の無い筆運びも濃淡の使い分けも魅力。
左 齋藤由比《真夏の世の夢》名画を達者に戯画化してあり、小花や布のディティールまでが丹念に描かれて見飽きない。
右 野村紀子《となりの果実》果実も飲料も朝の光を浴びているような瑞々しさで描かれている。フードロス問題も感じさせる構図。
左 辻みどり《鼓動Ⅰ》素材の魅力を最大限ひきだす使い方をしている。また構図には無駄がない。
右 千野希帆子《知らないⅥ》現代の女子高生のもつ不可思議な無関心さと併せ持つ大胆さがよく出ている作品です。
左 田中早苗《merⅢ》モチーフがユーモラスで筆致に嫌みが無く、飄々としているのに頭部にはリアルな質感がある。
右 細川秀子《リムジンパーティーA》Instagramにありそうな女子会の楽しい一瞬を切り取った作品です。素朴な筆致には逆にリアリティがあります。
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公募情報
女流画家協会
第72回 女流画家協会展
2018年5月29日(火)~6月3日(日)
東京都美術館(東京都上野公園内)
搬入日時 5月20日(日)
洋画、日本画、水彩、版画
出品資格 女性であること 年齢制限なし
出品 3点まで15,000円(総号数300号以内)25歳以下5,000円

第72回 女流画家協会展ポスター
ART公募内公募情報 http://www.artkoubo.jp/joryugaka/d_koubo.php
団体問合せ
女流画家協会事務所
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-7-8-1901 佐々木 里加
03-3961-1100
http://www.joryugakakyokai.com/


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