「新槐樹社」は、1924年に結成して10年で解散した槐樹社を前身とし、槐樹社のメンバーだった堀田清治が新たに同志を募り1958年に創設。以降、「美術活動を通じた各自の発展と相互の研鑽・親睦、新人の養成」を目的に掲げ、たゆまぬ歩みを続けてきた。今年2月には、66回目となる「新槐樹社展」を恒例の国立新美術館で開催。その会場を訪ね、中島忠副委員長、大槻博路事務局長の両氏に、会の特徴や活動について話をうかがった。
左:副委員長 中島忠先生 右:事務局長 大槻博路先生
組織変革を機に若手作家が増加
――まず、今年の「新槐樹社展」の印象はいかがですか?
中島: 新しい作家が出品して来られるようになりました。会が発展していく上で、新しい方々のフレッシュなエキスを加えて活性化していくことは、非常に重要なことだと思っています。特に若い方が増えてきているなという印象ですね。会員も、微増ではありますが、年々着実に増えています。
――今のこの社会情勢で、しかも若手が増えたという会は少ないのではないかと思います。要因はどんなところにあるとお考えですか?
大槻: 美術団体を含め日本の文化は師弟関係が強いので、そこには良くも悪くもいろいろなものが発生します。新槐樹社もかつてはそういう流れの中にありましたが、そういう上下関係の中では会員の声がなかなか聞こえてこないんです。そこで、もっと一人ひとりの意見に耳を傾け、皆の思いを反映した運営の仕組みにつくり替えて行こうということで、10年ほど前から少しずつ改革を進めてきました。その成果が、この5、6年で表れてきているのではないかと思います。皆、非常に伸び伸びとしていますし、外から見ても会の雰囲気が明るくなったとよく言われるんですよ。
中島: 力関係が生まれてトップによるワンマン体制になってしまうと、いろいろ弊害が生じてくるので、それを回避するためにすべてのことを合議制に変え、変革したんです。以来、会の雰囲気も自由闊達になりましたね。平等ないい会だという感覚を、皆さんが持ってくださっているのかなと思います。作風も、以前は尊敬するトップの先生に影響を受けた作品が多く見受けられましたが、最近は年を追うごとにジャンルの幅が広くなってきていますね。
大槻: 自由で多様な作品を見て、こういうところなら自分も出してみたいと思ってくださる方がいるのでしょう。それも出品者が増えた理由のひとつではないかと思います。また、会員や会友が絵描きのお友達を誘って展覧会に来て、それがきっかけでお友達が出品されるケースもあります。そういう方がどんどん増えてくれると、より豊かな会になると思うので楽しみですね。人を誘うということは、自分の会に誇りや愛情を持っているということですから、新槐樹社にはそれだけの魅力があるのだと自負しています。
会に所属するメリットと喜びを享受して欲しい
――会の具体的な活動について教えてください。
大槻: 2つの事業を柱としています。1つは、毎年2月に東京・国立新美術館で開催する本展と、その後に関西で開催する巡回展。例年は大阪と京都の美術館で開催していますが、大阪の美術館が現在改修中なので、今年は兵庫と京都で行います。2つ目は、秋季展。選抜で100点を超える作品を展示し、今年は10月に銀座アートホールで開催します。
中島: この秋季展もなかなか評判がいいんです。20号限定なので、大作とはまた違った楽しみ方ができるんですよ。作家にとっても、大作ばかりでなく、日常的に小さい絵を描き続けることは大事ですからね。
大槻: 新槐樹社は全国の各都道府県に支部があるので、支部単位でも展覧会を開催しています。そういう勉強の場や発表の機会をどんどんつくっていかないと、当会が掲げている「美術活動を通じて親睦・研鑽を図り、新人を育成する」という目的は実現できませんし、会に所属している意味がなくなってしまいますから。
中島: 研修会やスケッチ会なども支部ごとで開催しています。我々は関西組の場合は、年に2回、大阪・京都・兵庫・奈良支部の会員が集まって、1泊2日で写生会をするんですよ。日中に写生した絵を見せ合い、夜は酒を飲みながら講評するんですが、これがいいんです。飾らない素の姿が見える。刺激にもなりますし、作家同士の貴重な親睦の場です。この2年、コロナで中止になっているので、早く再開したいですね。
――そうして支部で切磋琢磨して腕を上げ、満を持して本展に出品するわけですね。
第66回展会場風景
委員長 日高昭二先生
大槻: 美術団体に所属する理由の一つは、発表する場が得られること。個人で国立新美術館のような場所に展示することはできませんし、地方で創作活動をしている作家が東京で発表する機会はそうそうないので、それが実現できるのは大きな魅力だと思います。一方でネックになるのが、作品の運送です。地方から東京まで100号の作品を個人で送るのは大変なんですよ。ですから支部によってはレンタカーを借りて作品を受け取りに回ったり、関西の場合は4府県の作品を一か所に集めてチャーター便で送ったり、できるだけ地方からも出品しやすいよう工夫しています。
中島: 絵を描くだけでもお金はかかりますし、今の若い方たちが制作を続けていくのは並大抵ではないんですよ。そこを少しでもサポートしていきたいという思いがあります。僕は絵を教えていて、最近はLINEでレッスンをしているんですが、他の会からも結構たくさんの人が作品の画像を送ってくるんですよ。
――それだけ多くの方が、こういうご時世にあっても創作を続け、精進していらっしゃるのですね。
大槻: 歴史を遡ると戦争をはじめ大変な時期がいろいろとありましたが、その中で作家はずっと描き続け、発表し続けてきました。それが作家の性だと思いますし、こういう変局だからこそ表現できるものや表現したいものがある。先人たちが描いたその作品が、今に生きている人たちにどう伝わり、どう受け止められていくのか。そこが芸術文化の継承と発展には大事だと思うので、私たち新槐樹社も文化発展のために、自分たちの役割を果たしていきたいと考えています。
(文・構成=杉瀬由希)
委員長 日高 昭二「回想」
左:中島忠「グレーブルーの時間」
右:「早朝の青い影」
大槻博路「22棚田シリーズより いろいろあっても・・・・‼」
左:照山 ひさ子「Domani’22-2」
右:「Domani’22-1」
内閣総理大臣賞 増田瑞枝「マテーラB」
文部科学大臣賞 潮來永子「秘めた情熱」
東京都知事賞 益倉初代「明日を待つ」
東京都議会議長賞 栗原親史「鎮座」
新塊樹社賞 中村光夫「眠れる人」
堀田清治賞 加藤まち子「葉裏の輝き」
早川義孝賞 高橋佳子「エリコ」
準委員賞 小玉精子「冬の朝釧路 2022」
努力賞 石黒千佳子「奏2022-l」
努力賞 宮内 和「秋色の大地」
奨励賞 小野和「巣立ちの森」
奨励賞 東海林信「秋を彩る山々山」
奨励賞 菊池良子「感情と理性ll」
奨励賞 弓指勇「像のにこちゃん」
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