artkoubo MAGAZINE
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[File46] 秀彩会
「描くうちに、絵に励まされている自分がいる」

2018/8/14 ※更新2022/7/20
入選作家インタビュー:成瀬敏江さん
成瀬敏江さん
絵とのかかわり方、楽しみ方には人それぞれの物語がある。今回は秀彩会会員の成瀬敏江さんに、自身の活動や作品についてお話をうかがった。癒しの世界を繰り広げる成瀬さんにとって、描くこととは。小品展会場の銀座幸伸ギャラリー(中央区銀座)を訪ねた。
もっと新しいことをしたい
  • 子どもの頃から、家族が団欒でTVを見ているようなときも、ひとりで絵を描いていたという成瀬敏江さん。進学では料理の道を選んだため、いったんお休みしていた絵への興味ですが、下のお子さんが高校生になったことをきっかけに地元・平塚の絵画教室に通いはじめることで再燃。旺盛に作品をつくるようになって、小学校や幼稚園、公民館に寄贈する作品もありました。
  • やがて作品制作の意欲は、量だけでなく技法の興味へと向かいます。
  • 絵画教室で手ほどきされる油絵や決まったパターンの静物画にあきたらず、もっと新しい技法にも挑戦したい。その思いで東京に活動拠点を移すことを決意します。
  • 新天地での活動のベースとなるのが公募展でした。どんな団体があるかをインターネットで調べていた10年ほど前、ちょうど結成間もなかった秀彩会が目に留まりました。
  • 「事務局に問い合わせをしたら親切な応対で『若い会だから一緒に盛り上げてほしい』と言われました。伝統のある公募団体は、先生たちの頭も凝り固まっている印象がありますが、秀彩会には風通しのよい雰囲気を感じました」
  • 自由な作風の作品があふれる団体の活動は、成瀬さんが求めていた「新しい技法への挑戦」も素直に受け止めてくれそうな予感がありました。
第10回秀彩会小品展にて
点描画との出会い
  • 東京での活動を展開していくのと時を同じくして、成瀬さんは点描の技法にたどり着きます。
  • ちいさな点を打って絵を構成する点描は、後期印象派の時代にジョルジュ・スーラらによって確立された技法で、並んで隣り合う複数の色が、見る人の視覚のなかで混ざって別の色を生み出す原理に基づいています。成瀬さんは山田嘉彦や岡鹿之助の点描作品にも親しみ、繊細な優しさと力強さを併せ持つこの技法に魅せられていきます。
  • 「光と影を表現したいんです」という成瀬さん。技術的な特徴は、重層的な絵具の使い方にあります。まずモチーフを大まかに捉える段階で、陰影を淡く描きます。点描がその下地の上に重ねられることで、色の配置だけでは表現できない奥行きが生まれます。

(左)小品展会場の入口にも成瀬さんの作品が

(右)額まで彩色が続く

額とひとつになる絵
  • 加えて、まっさきに目に付く大きな特徴は、その不思議な額でしょう。
  • キャンバスを囲む額が、フレームとしてではなく、キャンバスの延長として存在しています。
  • この額は作品ごとにオリジナルな額を製作しています。
  • たまたまある日、自宅のリフォームで来ていた大工さんが、壁に掛かる成瀬さんの絵に目を留めて、「実は額づくりに興味がある」と話してくれたのです。額装の専門家ではなかったことも自由な発想を助けてくれたのか、キャンバスの外側に絵の世界がそのまま広がっていく特徴的な作風が、偶然の出会いから生まれました。
明るい世界へ
  • 幼少期から一貫して描いてきた、愛らしい動物や植物、子どもたちが佇む柔らかな世界観ですが、点描、そしてユニークな額装によって、どこか現実からふわりと離れた空想的な独自の世界がさらに花開きました。
  • 「癒される絵だね、とよく言われます」
  • しかし描かれる絵は光に包まれていても、キャンバスに立ち向かうとき、いつも明るい気分というわけではなかったとも言います。世の中を見渡せば怖い出来事がたくさん起こっているし、家族の病気や介護も経験してきました。それでも、絵には明るい世界を表現したい。
  • 「集中して絵の世界に入って描くうちに、沈んだ気持ちも晴れていることがあります」
  • 「成瀬さん自身が、描かれる世界の明るさによって励まされる。そしてその絵を観る人がまた温かな感情を受けとる。成瀬さんの絵には、こころをあたたかく照らしていく魅力があるようです。
第9回2016秀彩展出品作《ずっとこの空の下で》
(取材・構成=竹見洋一郎)
成瀬敏江 なるせとしえ
  • 神奈川県に生まれる
  • 2012年 秀彩展 入選 新人賞受賞 以後毎年出展、入選
  • 2015年 個展開催
  • 秀彩展 秀彩大賞受賞
  • 泰野市立東小学校、泰野市立東小学校堀川公民館、すばる保育園へ作品寄贈
  • 2016年 個展開催
  • 他、グループ展毎年開催、公募展受賞多数。
  • 現在 秀彩会運営委員。
公募情報
秀彩会
第11回 秀彩展 ※終了致しました。
  • 会期
  • 2018年11月25日(日)~12月2日(日)
  • 会場
  • 東京都美術館
  • 搬入日時
  • 2018年11月18日(日) 10:00-16:00
  • 作品種目
  • 日本画、油彩、水彩、パステル、版画、切り絵、押し花等
  • 一部 人物画、二部 自由画(風景、静物等)、三部 小作品画
  • ※どの部に出品してもよく、各部に出品も可
  • 出品料
  • 2点まで8,000円 1点増すごとに1,000円

第11回 秀彩展ポスター

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