Artist Group-風-
作家として一歩を踏み出す“夢の場所”を目指して

2019/2/8
第7回Artist Group-風- 入賞者の木下めいこ
日本橋高島屋本店で開催された小品展「花信風」会場にて
2012年に日本画家の中島千波、中野嘉之、畠中光享らで結成された、最大7mの大作公募展「Artist Group-風-」。その第1回公募以来、過去4度の入賞を果たし、さらに2018年の第7回公募でも「紺青の花」で入賞した木下めいこに、「Artist Group-風-」(以下「風展」)の魅力や、作品制作の裏側を伺った。
<略歴>
木下めいこ(きのした めいこ)
1977年 東京都生まれ
2000年 多摩美術大学日本画専攻卒業
2002年 多摩美術大学大学院日本画修了
多摩美術大学 芸術学科非常勤講師
美術科連盟会員
個展・グループ展・受賞多数
――今回、5度目の入賞をされましたが、そもそも風展に応募したきっかけを教えてください。
第1回目に応募した時、私は34歳でした。大学を卒業後、2人の子どもを育てながら制作を続ける中、35歳を目前にして「このままでいいのかな?」という焦る気持ちが募っていました。下の子どもも保育園に入れたし、何か次につながるようなチャレンジをしたい。そう思っていた時に、ちょうど風展がはじまることを知りました。もともと主催の先生方の絵は好きで、影響を受けた方たちだったので、一緒に展示ができるならと応募を決めました。
2012年 第1回展 入賞作品「時分花」
1820×390mm×10枚 杉板、絹、岩絵具
2013年 第2回展 入賞作品「Peafowl-孔雀-」
1900×6300mm 杉板、絹、アートグル―、岩絵具、染料、金泥
2014年 第3回展 入賞作品「輝跡(キセキ)」
1920×6320mm 杉板、絹、岩絵具、染料 他
――風展に応募してみようという方はたくさんいらっしゃると思いますが、実際に応募されて感じた、風展の魅力はなんでしょうか?
風展の目的のひとつが若い作家を育てることにあるので、先生方から直接アドバイスをいただいたり、応援していただけることが魅力だと思います。中島先生は本当に気にかけてくださって、私が鎌倉に住んでいることから、鎌倉市観光協会の納涼うちわを「やらない?」と声をかけてくださったこともあります。うちわを制作したことで地元の人たちから「凄い頑張っているんだね」と言われたくらい影響力があって、声かけてくださって本当に嬉しかったです。中野先生も、ご自身では何もしていないとおっしゃるけど、多摩美術大学の非常勤講師として呼んでくださいました。畠中先生は、私が絹に描いていると言ったら「インドの絹があるから」とおそらくとても高級な絹をロールで2本くださったこともあります。他にも落款の押し方をはじめ、作家として売り出していくためのマネジメントの仕方を一から伝授してくれます。
――同じく入賞された作家さんたちとも交流があるのでしょうか?
入賞すると展覧会で東京、京都、大阪と巡回するので、皆さんと会う機会が多くてすごく仲良くなれます。年齢も出身地もバラバラで、大学もみんな違うのがよい刺激になります。他にも展覧会を通じて画商さんや額屋さんなど、今まで知り合いになれなかったような方とも知り合いになれました。たまたまル・クール社というカード会社の方に声を掛けていただき、鳩居堂さんや伊東屋さんで私の作品を元にしたカードを販売するようになったり。しかも、ソフトバンクの孫正義さんが大量に発注してクリスマスカードに使ってくださったそうです。
特別審査員の横山秀樹さん(新潟市新津美術館館長)にも、日経日本画大賞展に推薦していただきました。それも、展覧会場で先生方と話していた時にちょうど横山さんがいらっしゃって、紹介してくださったのがきっかけです。だから正直、会場にはできる限りいた方が絶対得です(笑)。先生たちの話を聞くのも勉強になります。自費になりますが京都、大阪の会場も行った方が良いです。折角展覧会に足を運んだのに作家が誰も居なかったら、お客様にも申し訳ないですから。作家も直接お客様とお話しできる貴重な機会になりますし、お客様の中には作家と直接会って買いたいという方もいらっしゃいます。
それから、入賞したら日本橋髙島屋美術画廊で開催される小品展に出品できるのも魅力的でした。学生の時に、中野先生の個展を見に行ったりしていたので、髙島屋さんは「いつか個展ができたら」という夢の場所でした。それが、入賞して小品展に出品できただけでもすごいことなのに、3回目の入賞の後には、声を掛けていただき個展も開くことができました。風展に応募したことで、まさに夢が叶いました。
「風展」入賞特典の小品展「花信風」の会場(髙島屋日本橋店本館)
大阪展1月23日~29日(髙島屋大阪店)
京都展2月13日~19日(高島屋京都店)巡回予定
――その木下さんの入賞作品は、杉板に描いたり、シルクを貼ったりするなど、技法がとても特徴的ですね。
杉板に描きだしたのは大学2年生の頃です。京都で杉の扉に描いてある杉戸絵を見て、「日本画だけど和紙じゃない物に描く」ことに興味を持ったのがきっかけです。途中、一旦やめた時期もありますが描き続けて、卒業制作も杉板に描きました。ただ、杉板に描いていると絵具がどんどん板に吸い込まれてしまい、絵具の発色が悪くなってしまうんです。途中からシルクオーガンジーという、結婚式のベールなどに使う薄いシルクを貼って、その上に描くようにしたところ、絵具が落ちず発色がとても良くなりました。
2017年 第6回展 入賞作品 「桜狩(さくらがり)」
1930×6860mm 絹本、杉板、岩絵具、墨、金箔、銀箔、染料、アートグレー、火
――小品として描かれたクジャクの絵など、一部杉板を彫っている部分もありますね。
私の住む鎌倉には、「鎌倉彫」という彫り物があって、家には祖母が使っていた彫刻刀もたくさんありました。もともと私自身も版画など彫るのが好きでしたので、せっかくの杉板だから彫ってみようと思ったのがきっかけです。筆で描くような線では出せない、鋭利な線を出せます。自分で描くというよりは、自然物の力を借りて、木に線を委ねながら描くという感じです。
――今回、入賞された作品はまた違う技法にチャレンジしているそうですね。
今回はサイアノタイプという、感光液を使って写真のように転写させる技法で作りました。感光液を塗った紙の上に植物などを置いて太陽光に当てると、写真のように青く印刷されるんです。そのままではつまらないので、「感光液を絵具みたいにして描けたら面白いな」と思って制作しました。
2018年 第7回展 入賞作品「紺青の花」
2270 × 6360mm 麻紙・岩絵具・銀箔・サイアノタイプ・太陽光・アートグルー
――サイアノタイプは太陽光の強さや、絵の具の濃さによって色味が変わってくるそうですね。
強い日差しにパッと当てると色が濃くなり、反対に弱い日差しの日に長時間置くと薄くなります。夏の間に制作したのですが、光に当たると感光するので、部屋を暗室のようにして描きました。感光液は黄色ですが完全に乾くと、ちょっとグレーっぽくなるんです。それを太陽光に当てて、その後に水で洗い流すと青く発色してきます。1回で終わりではなく、その日の日差しによって何回も行います。すると、色を重ねることができ、グラデーションを出すことができるんです。水で洗い流して定着すれば、どんなに水をかけても薬品が流れないので、くっきりとプリントされます。反対に少しぼやかしたい時は太陽光に当てている段階で、少し水で濡らしてあげる。すると、濡らした部分が少しぼやけます。
また、白っぽくなっているのは銀泥で描いて硫黄の粉で薬品を焼いて色を出しています。普通に焼くとしわしわになりませんが、あえて和紙を丸めてその間に硫黄の粉をはさんで焼くと、和紙がくしゃくしゃとした良い感じになります。ところどころ生花や葉っぱを置いたり、夕顔の花の中心にティッシュペーパーを丸めたものを置いてグラデーションを出したり、色々と実験しながら楽しんで作りました。
「紺青の花」部分
――全然違う技法でも、素材の特性を生かして描いている部分は共通していますね。
素材や描いているモチーフの気持ちと私の気持ち、そして最後にこの絵を見てくださる人の気持ちとがあって作られるような絵を描きたいという思いがあります。そういう意味では日本画は自然の素材を使ったりするので、自分の気持ちに合っているなと思います。今回の作品は、日本画の絵具はほとんど使っていませんが、そういう意味であえて「日本画です」と言っています。
――最後に、次回応募してみようと考えている方へメッセージはありますでしょうか。
とりあえず出してみること、ですね。私も2回落ちているので、大きな絵を描いて落ちた時のショックを経験していますが、それ以上のものを吸収できるし、見返りがあると思っています。落ちたとしてもこれだけの大作を描くこと自体に絶対意味があると思うからチャレンジしてほしいです。それと、出すからにはベストを尽くすこと。今思えば、私が落選した時は、ちょうど非常勤講師を2年やっていた時で、他のことに気を取られていて、ベストを尽くせていませんでした。自分で「ここまでやったから大丈夫」と思える作品でないとダメだと思います。そして、個展や展覧会など、大きな仕事につながるような作家として一歩を踏み出すチャンスがある場なので、ぜひ挑戦してもらいたいです。
2018年 第7回展会場風景(東京都美術館)
――小品展のギャラリートークで、10回展目までは応募を続けたいとおっしゃっていましたが、改めて木下さんの今後の目標を教えてください。
本当は10回全部入賞しようと思っていたんですが、2回落ちているので、とにかく45歳の年齢制限内の10回展目までは絶対に応募して、先生方に作品を見てもらう。それが今の目標です。私が先生方に恩返しができるとしたら、良い絵を描くことしかないと思っているので、頑張って続けていきたいです。そして、いつか私たちの世代が先生たちぐらいの歳になった時に、先生たちのように後輩の育成ができたら、という思いもあります。だからそれまで頑張りたいと思います。
(取材・構成 浅井貴仁 ヱディットリアル株式會社)
◆アート公募内関連記事
公募情報
Artist Group-風-
第8回 Artist Group -風- 大作公募展
2019年10月23日(水)~10月30日(水)
東京都美術館 ロビー階第4公募展示室
2019年8月20日(火)~8月28日(水)必着
満45歳以下(国籍不問)
日本画、油画、混合技法、その他平面。

*未発表作品に限る 卒業制作は不可
*作品サイズ:横7m内(高さ2.6m)を限度内として統一した作品とする。
*パネル等を連結し一体の作品、離して連作の作品など形式・形状は自由
 7×2.6mの壁面内を自由に使い構成して構わない
 自身の考える大作といえる作品を自由に応募・チャレンジして下さい!

8000円(税込み)
中島千波、中野嘉之、畠中光享
第8回展ポスター
ART公募内公募情報 http://www.artkoubo.jp/artkaze/d_koubo.php
団体問合せ
Artist Group-風-
03-6320-7021(月曜、火曜の13時~16時)
post@agkaze.jp
http://www.agkaze.jp


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