「Artist Group-風-」は、2012年の設立と、比較的若い公募団体だ。7メートルの大作を公募するなど、他の団体と一線を画した活動を展開、2017年度の第6回展からは、東京都美術館のロビー階に会場を移すことになった。主宰のひとり、中島千波にグループの特徴を聞いた。
7メートルを描くことで得られる力
「Artist Group-風-」では、45歳以下を対象に、7メートルの大作を募っています。
45歳まで、という制限は、私たちが新しい才能を期待しているという姿勢を示すためのものです。そして7メートルという大きさは、それぐらいの大作を形にする力と覚悟を持った人を求めているということです。他の公募団体に比べて、どちらの条件も高いハードルであると思います。しかし個人的な意見ですが、10メートルにしたいくらいでした(笑)。
この条件からも明らかなように、私たちは会員さんの人数だけを増やして、「公募団体」という商売をする気持ちはないのです。優れた作品を展示する、観るに値する展覧会を開きたい、との純粋な願いから出発しています。
私自身の経験でも、7メートルもの作品を制作することは、大変なことです。なにしろ売れませんから、会期が終わると作品が自宅に戻ってきて置き場所にも困ります(笑)。一方で、それくらいの規模の作品に挑戦することで、作品づくりの新たな視座を得ることもできます。
小さくまとまることで成立している作品を、単純に拡大しても、絵として成立しません。ぼやけてしまうのです。大作には、神経を研ぎ澄ませ、画面のすみずみまで高い密度を保つ意識が必要になります。大きい作品が描ければ小さい作品も描けますが、その逆はないのですね。大作に挑戦するなかで発見する多くのことは、その人が作家になるための意識を形作るものになるはずです。
第4回会場の様子
※以下、作品画像はすべてArtist Group-風-2015年第4回展より
井口信《ユートピア》 綿布、岩絵具、土、 銀箔 230.0×680.0cm
押元一敏《Walking》 雲肌麻紙、岩絵具 194.0×650.0cm
小林英且《つながり》 木製パネル、ミクストメディア(主にアクリル絵具)182.0×682.0cm
平良優季《奏想》 麻紙、寒冷紗、岩絵具他 210.0×600.0cm
中野浩樹《層―so―》 パネル、綿布、岩絵具、樹脂膠 110.0×690.0cm
中村七海《舞楽図》 麻紙、岩絵具、墨 240.0×700.0cm
野地美樹子《影綴り》 パネル、和紙、岩絵具 182.0×682.0cm
新しい会場で、より多くの作品を展示
2017年度からは東京都美術館のなかで展示スペースを移ることになり、ロビー階のより広い会場になります。約300平米から700平米と、倍以上の変化です。パーテーションは最低限にし、広々と使用する予定です。2段掛け、3段掛けで壁を埋めることもありませんから、観る人にとってもゆったり美術を鑑賞できる環境です。入場も無料です。
この広い会場に、従来7人でしたが、倍以上の入選作品を展示することになります。これは入選者が倍以上になるということで、応募する人にとっては「Artist Group-風-」の門戸が広がるのではないでしょうか。
応募したら、自分の作品が審査でどのように評価されるか、気になる人は多いと思います。私たちは落選した作品に、一つひとつコメントを書いて返信することにしています。残念ながら選ばれなかったにしても、なぜ選ばれなかったのか、どうすればより良い作品にできるかといった講評の機会をつくっているのです。また、審査自体も公開ですから、感心のある方は見に来ることもできます。私を含めた3人の審査員がどんなふうに自作を評するのか、ハラハラしながら見守っていただけます(笑)。
審査の様子。左から、畠中光享、中野嘉之、中島千波
作家への道筋をつける、髙島屋での巡回展
「Artist Group-風-」の入選作家は、展覧会のあと、高島屋美術画廊で小品発表の機会があります。東京店・京都店・大阪店を巡回します。
先ほど大作はなかなか販売が難しいという話しをしましたが、言うまでもなく、作家にとっては絵を売ることも大切です。公募展の入選と、一般的に購買機会の多い百貨店の小品展とを連動させることで、「Artist Group-風-」は作家として生きていくための道筋をつけることにも協力したいのです。審査の日には、髙島屋の美術担当者もギャラリーとして例年参加します。手掛けることになる作家の作品をいち早く確認し、情報を交換するためです。
「Artist Group-風-」はこのように、描く人の立場に立ち、作家の目線で考えた公募展です。
大作ですから、若い人にとっては制作場所を確保するところから挑戦になるかもしれません。しかし、連作や組作品も受け付けていますから、環境のなかで工夫して取り組んでいただきたいです。巻物タイプの出品も過去にはありました。日本画に限らず、油画も、混合技法も募っています。まずは規定のサイズを満たすこと。大きな作品に取り組むことに挑んでいただきたいです。
東京・京都・大阪の髙島屋の画廊を巡回する小品展「花信風」
(取材・構成=竹見洋一郎)
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