佐々木真士に話を聞いた。高島屋日本橋店6階美術画廊で開催された、小品展「花信風」会場にて
数ある公募団体のなかでも異色といえる、最大7mの大作公募展「Artist Group-風-」。2017年に開かれた第6回展の入選作家である佐々木真士は、第1回公募から本公募展に挑み続け、過去3回もの入賞を果たしている。佐々木にとって公募展はどのような意味を持つかを聞いた。
モチーフの在り処
- 京都を拠点に活動する佐々木真士は、インドをモチーフにした一連の作品を制作してきた。公募展「Artist Group-風-」へは、団体の主催者のひとりである畠中光享との縁で知り、第1回展から作品を応募している。最初の入選は第2回展での《聖地礼讃》。白い外壁を背景に行き交う人々のカラフルな服飾が印象的な、幅6メートルを越える大作だ。
- 「大学卒業以来、インドは何度も訪れています。さまざまな宗教、文化が混在となったインドを旅していると、驚くような出会いがあります。たとえばガジュマルに干してある行者の服がハッとする色彩だったりするように、魅力的なモチーフが風景のなかにあるんです」
- 中島千波、中野嘉之、畠中光享といった日本画界の錚々(そうそう)たる顔ぶれ、さらに招待審査員として加わる評論家の方からの批評を受けられるのは、「風展」という大きな舞台ならではと感じる。
- 「スタイルを決めずにやればいい。好きなもの、画家の心を動かすものは何でも絵のモチーフになるはず」という中島千波の言葉を受けて、インドから一転、住んでいる京都の見慣れた景色を切り取ったのが《出町の柳》。第5回展での入選作となった。モチーフの大きな変化に、応募者の名前を伏せての審査会のあと、佐々木の作と分かって審査員にも驚かれたという。
第2回展入選作品《聖地礼讃》183.0×644.0cm
第5回展入選作品《出町の柳》180.0×630.0cm
第6回展入選作品《ジャロールの木》180.0×630.0cm
つまずくよりも、大きく転びたい
- 佐々木はこれまで、第2回、5回、6回展と入賞を重ねてきた。本公募展の常連作家の一人といえる。佐々木にとって大きな作品を制作することは、どのような意味を持つのだろうか。
- 「もともと自分の身体より大きいような、目の届く範囲を超える画面に魅力を感じていました。大作を制作する面白さは、未知な要素が多いところにあります」
- 制作に際しては、完成するサイズを複数枚の規定サイズのパネルに分割して描いていく。一つのパネルごとの完成度、さらに全体を構成したときの印象のまとまりと、描きながら意識しなければならない要素は多い。
- 「大作は、描きながらはもちろん、展示しながらも学ぶところの多いジャンルだと感じています。入選して、東京都美術館の会場で展示して初めてわかることがある。自分の作品のどこがよくてどこが弱いのか、他の作品と比べてきちんと存在感を示しているかなど、会場でやっと客観的に観ることができるのです。小品でしたら、自分の部屋に置かれていても類推できるものですが、横幅が7メートルとなると自室では全てを見ることができません」
- 最初の構想から完成後の展示まで、まったく気を休めるところがない。佐々木は大作を、自身にとって挑戦と考えている。
- 「画面が大きいほど、より大きなチャレンジを受け入れてくれる。そのため大作で失敗すると、つまずきというより大こけになりますね(笑)。でも、どうせなら大きく転びたいと思っています」
- 新しい作品世界を拡げていく佐々木の姿勢は、作家の側に常に挑戦を求める「風」の気風とみごとに合っているようだ。
第6回の入選者。小品展「花信風」会場にて
後方左から、矢吹沙織、杉澤友佳、山本陽光、奥山加奈子、野地美樹子、有冨禎子、笠原浩美、佐々木真士、小柳景義、
前方左から、今枝加奈、横山芙実、武井地子、粂原愛
東京都美術館で2017年10月に開かれた第6回展の様子。
第5回までの地下会場から、ロビー階の広い展示室に移ったことで、入選者の人数も7名から15名になり、充実度が増した。
「新しい展示室で、作品が伸び伸びと見え、それぞれの世界が表現されているのを感じる」と佐々木。
佐々木 真士(ささきしんじ)
- 1976 広島県生まれ
- 1999 京都芸術短期大学研究生修了
- 2004 NEXT 招待出品(京都高島屋/砺波市美術館)
- 2008 The NIHONGA-伝統と創造- ‘10 ’12 ‘17
- 京都美術ビエンナーレ 朝日新聞社賞 ‘12毎日新聞社賞
- 2009 Nihonga・京(日本橋三越/東京、‘11 ’14大阪店巡回) ‘17
- 2012 第5回東山魁夷記念日経日本画大賞展
- 2013 第2回ArtistGroup風 ‘16、 ’17
- 2017 第35回京都府文化賞奨励賞 その他個展、グループ展等
(取材・構成=竹見洋一郎)
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