(左)2014年第91回春陽展メインエントランス(絵画)
(右)2014年第91回春陽展3階エントランス(版画)
※作品画像はすべて2014年第91回春陽展、春陽会賞より
2013年には第90回展を開催した春陽会。1922年に小杉放庵、森田恒友、岸田劉生、中川一政等によって設立され、時代ごとの美術の潮流をつくってきた春陽会は、いま100周年に向けてどのような動きをしているのだろうか。理事長の山本睦に話を聞いた。
作品本位で評価
- 春陽会の特色は、絵画と版画の平面作品だけを扱う会であるということです。公募団体は、いろんな活動をしている作家の集まりです。一口に平面作品といっても、作家の数だけ表現は多様ですし、私たちとしてはいろんな作品を受け入れていきたいと考えています。公募団体は歴史が長い反面、多くの人に先入観を持たれている部分もあります。そのひとつは「大作主義」かもしれません。大きな会場に大きな作品を展示する、というのは醍醐味ですが、私たちはF130号までという上限がある一方で、サイズの下限をもうけていません。これは春陽会らしさだと思います。
- F10号程度の作品が搬入されることはよくありますし、そういう小さなサイズの作品が入選することもあります。基本にあるのは「作品本位」という姿勢。作品がよければ喝采を送るべきだと思っています
(左)唐沢弥生 《風をきくIII》 F130
(右)今尾啓吾 《Medusa》 160×120cm
(左)本荘鎭夫 《岩[III]》 F40
(右)務川めぐみ 《吹きすさぶ》 64×93cm
人を育てる研究会
- 公募団体には「人を育てる」という役割があると思いますが、春陽会でその部分を担うものとして、研究会の存在があります。
- 地域ごとに会のメンバーが集まり、創作を通して切磋琢磨し交流する研究会は、春陽会が設立されてすぐに組織されました。当初は先生の自宅やビルの会議室を借りたりしていましたが、現在では人数も増えて、地域の公共の施設を借りて開かれます。版画で4、絵画では17の研究会が、全国各地にあります。それぞれの研究会ごとに作品発表会も行われ、その選抜展を東京で開催するなど、各地の活動が活きるように運営されています。
- このような研究会は、地道に絵を描いていきたい人の活動とコミュニケーションの場となっています。私自身、研究会で育ててもらったという意識があります。
100周年に向けて
- 春陽展では、出品する人にも見る人にも、楽しんでいただける展示を心がけています。
- 展示では、会友、会員と一般出品の方との展示を、分け隔てなく平等に展示することに努めています。一般出品だからといって、狭い空間に隙間なく敷き詰めて展示することはありません。
- 春陽展会場では会員が講師となり作品の解説をしながら会場を回る「アートツアー」を毎年行ったり、絵画と版画の会員による専門技術や表現方法について資料性の高いスペースを設けています。
- 長らく春陽会はチャリティーで社会貢献に努めています。画廊で買えば高額な作品を、会場で特別価格で販売し、その売り上げを厚生事業団へ寄付しています。毎年楽しみにしている人も多く、いままで絵を買ったことがない人も、初めての機会として活用いただいているようです。
- 100周年展ではさらにいろいろな展示の見せ方を工夫したいですね。春陽会の歴史をつくってきた著名な作家や若手にスポットをあてる特別展示など、これまでに試みてきた企画をさらに展開して、充実した節目の年にしたいと思います。
(取材・構成=竹見洋一郎)
春陽会理事長の山本睦
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