2015年「第92回春陽展」より、批評会の様子
厳正かつ公正な審査で選ばれた質の高い作品が並んだ
日本美術史に多くの足跡を残してきた春陽会は、設立から90年以上を経た現在も精力的な活動を続ける。展覧会と研究会を全国で展開した2015年の活動を振り返りながら、理事長の山本睦に聞いた。
第92回春陽展
- 2015年春の「第92回春陽展」は、絵画約470点、版画約170点が公募で選ばれ、六本木の国立新美術館で開催されました。春陽会では、展覧会会期に合わせた催しにも力を入れていて、今回は三重県立美術館館長の毛利伊知郎氏による「中谷泰の芸術」と題した記念講演や、入選者批評会、コンサート、アートツアーなどが開かれました。上野から六本木に会場を移して9年になりますが、これらの催しは恒例の企画として定着してきて、毎年楽しみにされているリピーターも多くいらっしゃいます。
- 特に講演会は、スライドのレクチャーや、著名人を招いてのパネルディスカッションなど、毎年趣向を変えた内容でお届けしています。2016年の企画にも注目していただきたいですね。
版画部の批評会の様子
2015春陽会受賞作家展
- 2015年11月18日から23日まで兵庫県で開かれた「2015春陽会受賞作家展」は、「第92回春陽展」の受賞作の中から、会員の受賞者を含め会友や一般の方の入選者を対象に、受賞作と新作を展示するものです。会場となった原田の森ギャラリー(兵庫県立美術館王子分館)の広い会場のなかに、絵画19人、版画6人の計25人の力作が並びました。
- 会場には全国から会員13人もかけつけ、批評会が行なわれました。出品者からは「これからの方向性を示してもらえ、参考になった」との声をいただいています。また受賞作品についても「東京で展示されているのとは作品の印象が変わる」と感想を持たれた方がいました。展示空間の設えだけではなく、土地ごとの固有の空気が鑑賞の気分に影響を与えるのでしょう。
「2015春陽会受賞作家展」会場の様子
関西春陽会展2015
- 受賞作家展と同時開催で開かれた「関西春陽会展」は、関西在住の研究生の作品を展示するものです。本展での入選の有無にかかわりなく作品が選ばれます。そのため、自作が公の場で展示されるのは初めて、という方もいらっしゃいます。また、本展で入選しても、作品を観てもらうよう知人・友人を東京に誘うのは難しいものですが、地元の会場で展示されるとなれば、敷居はぐっと下がります。たくさんの人の目に触れ、感想を聞くことは、制作のモチベーションにつながります。
- 春陽会では1997年から、受賞作家展を地方で開いています。受賞作家展を地方で開催する意義は大きく、たとえば東京の作家が地方での展覧会に行くことで会員同士の交流が深まることももちろんですが、春陽会の各地の支部にとって、大きな展覧会を主催するという大切な機会です。
- 作家にとって、作品を多くの人に見てもらう展覧会の機会はとても大切なものです。その舞台をきちんと演出し、つくり手にも、見てくださる方にも満足していただくことが公募団体の使命です。受賞作家展は、昨年は福島、来年は富山でと、毎年場所を変えて全国各地を巡回していきますが、各地域の春陽会を活性化させることに寄与しています。
- また、広く美術に関心のある人たちに、地元で開かれる展示を通して、「春陽会」の取り組みを知っていただく良い機会になればと考えています。
「2015春陽会受賞作家展」と「関西春陽会展」が同時開催された
第92回春陽会 絵画部/春陽会賞
草柳公三 《園》
第92回春陽会 絵画部/春陽会賞
中台ゆう子 《頭蓋骨 (I)》
第92回春陽会 版画部/春陽会賞
石原テツロウ 《ことだまXIX》
(取材・構成=竹見洋一郎)
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