[File5] 太平洋美術会
結成以来1世紀あまり。日本美術史に刻まれた大きな流れ

2015/3/10 ※更新2022/7/7
太平洋美術会研究所、絵画教室の様子
日本最初の洋画団体からの伝統を受け継ぐ太平洋美術会。創設126年目を迎える会の歴史や特徴について、理事の佐田昌治に聞いた。
洋画団体の源流として
太平洋美術会のあゆみを辿ることは、そのまま日本の美術公募団体の歴史を振り返ることでもある。
前身となる明治美術会が誕生したのは明治22(1889)年のこと。日本の伝統的な美術を擁護するアーネスト・フェノロサと岡倉天心が起こした洋画排斥運動を受けて、洋画家たちが団結し、日本最初の洋画団体が産声を上げた。
「設立年に開いた第1回の展覧会が、国内最初の洋画の展覧会と言われています。私たちの活動は、当時、文学者の夏目漱石や森鴎外らからも支持を受け、洋画排斥の気運はしだいに収まっていきました」と佐田は語る。
洋画研究がふたたび軌道に乗り始めると、黒田清輝らが会を脱退し、新しい団体を結成。黒田が海外から持ち帰った印象派の画風は「新派」と呼ばれ、洋画のなかで新旧の対立が起きていく。
「激動の時代ですね。エピソードに事欠きません。太平洋美術会の歴史は大河ドラマの素材になるんじゃないかと常々思っています(笑)」
太平洋美術理事の佐田昌治
先達の足跡を回顧する
明治美術会は明治35(1902)年に太平洋画会、昭和32(1957)年に太平洋美術会と改称して、現在に引き継がれている。その間、いくつもの団体が明治美術会を母体として生まれていった。いわば美術公募団体の源流といえる存在だ。
「水彩画が隆盛したときにも、水彩のみを扱う別の団体が太平洋美術会から生まれていきました。昨年(2014)の第110回記念太平洋展では、会として水彩画の歴史を再評価しようと企画展を開きました」
企画展では、水彩画家の丸山挽霞と吉田博の秀作を展示。その高度な技術、圧倒的な書き込みは当時アメリカ、ヨーロッパで評判を呼び、美術館に買上げられた作品でもあり、会の歴史と実力をあらためて示す機会となった。
(左) 丸山晩霞 《しゃくなげ》 100号 1936年 個人蔵
(中) 丸山晩霞 《浅嶽旧噴火口》 10号 1914年 個人蔵
(右) 丸山晩霞 《白馬神苑》 10号 1907年 個人蔵
(左) 吉田博 《月見草と浴衣の女》 20号 1907年 個人蔵
(中) 吉田博 《吉野》 10号 1890年 個人蔵
(右) 吉田博 《雲井桜》 20号(複製画) 1899年 個人蔵
学校として
会では「太平洋美術研究所」をつくり、絵画、版画、彫刻、クロッキーなどの教室を開いている。これも歴史が長く、多くの作家が学んだパリ・アカデミージュリアンの本格的な勉強法を取り入れ、明治37(1904)年、谷中清水町に洋画研究所を開設したところまでさかのぼる。また、自由で個人尊重の伝統的校風から、中村彝、古賀春江、靉光、松本竣介、有本利夫など公学校からは育たない個性的な作家を輩出している。
太平洋美術研究所では現役作家の講師陣が、一人ひとりの個性に合わせて個人指導を行っている。プロを目指す人にとっても、生涯学習として学びたい人にとっても、伝統が息づく研究所アトリエでの学びの機会は、得がたい体験となるだろう。
西日暮里、諏訪神社前の校舎
(左) 浅田敏子 《2014-M-Tai》 油彩 第110回記念展 文部科学大臣賞
(中) 山本順一 《地球からのメッセージi》 水彩 第110回記念展 損保ジャパン美術財団賞
(右) 皆川滋水 《数列の恵みi》 版画 第110回記念展 内閣総理大臣賞
(左) 桜井眸 《人物Ⅰ》 彫刻 第110回記念展 荒川区長賞
(右) 亀谷佳美 《導》 染織 第110回記念展 東京都知事賞
(取材・構成=竹見洋一郎)
公募情報
太平洋美術会
第111回太平洋展 ※終了致しました。
  • 日程:2015年5月13日(水)~25日(月)
  • 会場:国立新美術館(東京都港区六本木)
  • 福岡・大阪・名古屋・神奈川・千葉に巡回
  • 応募締切日:4月10日(金)
  • 搬入日時:5月4日(月)、10:00~15:00
  • 作品:自作未発表の油彩・水彩・版画・彫刻・染織
  • 大きさ:油彩(50号以上500号まで)・水彩(30号以上80号まで)
  • 版画/染織(規制なし)彫刻(美術館規定あり)
  •  
  • 絵画一般出品者のみ、特別20号コーナー(新設)に出品可能。
  • 出品料:2点まで11,500円。(カラー図録代・送料含む)
  • 3点目以降、1点増すごとに2,000円加算。
第111回展のチラシ
ART公募内公募情報 http://www.artkoubo.jp/taiheiyobijutsu/
団体問合せ
一般社団法人 太平洋美術会事務局
TEL:03-3821-4100
東京都荒川区西日暮里3-7-29
info@taiheiyobijutu.or.jp
http://www.taiheiyobijutu.or.jp

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