artkoubo MAGAZINE
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[File80] 旺玄会
純粋に美術を探求し、公正明大に評価する、生涯の学びの場

2023/2/3
1932年の創設から91年目を迎え、この5月には第89回となる本展を上野・東京都美術館で開催する旺玄会。3年に及ぶコロナ禍で、さまざまな規制が生じた中でも歩みを止めることなく、作家達の創作意欲を奮い立たせ、スキルを向上させる意欲的な試みを行ってきた。そこで現在の取り組みと旺玄展について、副理事長・片山聖三、常任理事・伊藤功の両氏にうかがった。

(左)常任理事・伊藤功先生

(右)副理事長・片山聖三先生

厳正かつ丁寧な審査で、すべての応募者に平等にチャンスを
  •  昨年、3年ぶりに東京都美術館での本展開催を実現した旺玄会。出品者数は若干減少したものの、ステイホーム期間に自身の制作とじっくり向き合ったと思われる力作や、ステップアップが著しい作品が数多く見られ、今後への手応えを感じさせる展覧会となった。
  •  旺玄展の各賞の審査は、常任委員および委員と外部特別審査員2名を含む総勢30余名により、3日間にわたり3審査制で行われる。第1審査では入選、保留、選外を選考。第2・第3審査では1審で保留となった作品の再審査や、入選作の中から賞候補となる作品の選考を行い、無記名投票で各賞を決定していく。狎れ合いや癒着を防ぎ、公正を期すため、外部特別審査員の任期は3年に限定。視座が偏らないよう画家と美術評論家など専門分野が異なる2名を人選し、交代する年をずらすことにより継続性を保ちながら新陳代謝を図るなど、風通しのいい組織と透明性の高い審査システムが構築されている。
審査会場の審査の様子
文部科学大臣賞 松岡曉子「繋がり」
委員特別賞 志澤保子「2時頃までには」
  • 「去年は、前年に続き画家の大庭英治先生と、もう御一方は多摩美術大学で教鞭を執られている美術評論家の中村高朗先生を新たにお迎えし、外部特別審査員を務めていただきました。中村先生は、これまでいくつもの美術団体の審査をされてこられた方ですが、こんなに時間をかけて審議するのは初めてだったそうです。総評としては“表現”のある作品、つまり絵にとって一番大切な“訴えるもの”がある作品が多かったと感想を述べられていました。大庭先生からも『個々の創作意識の高い展覧会』という評価をいただき、会是である“画の探求、我の調和”を追求してきた我々の精神を、外部の先生方も感じ取ってくださったのだと思います」(伊藤常任理事)
  •  受賞作品は、秋に東京銀座の画廊で開催する「受賞作家選抜展」に展示される。受賞作家選抜展は、一般出品者および若手作家を育成し、美術界に送り出すための支援策として2021年から実施されている展覧会であり、昨年は21名のうち一般出品者が4名を占めた。銀座という、上野とはまた異なる客層に発信できるチャンスが、会員、一般を問わず平等に与えられていることは、作家にとっては大きな魅力だろう。
受賞作家選抜展
受賞作家選抜展会場 銀座あかね画廊
作家の負担を軽減する環境を整え、制作・出品をサポート
  •  旺玄会では今年の第89回旺玄展を、「正常な展覧会の復活と、コロナで失われたものを復旧する新たなスタート」と位置づけ、ここ数年の不安定な社会情勢による作家活動への影響を鑑み、活動の継続と創作意欲の向上をサポートする施策を用意している。
  •  まず出品既定の一部を変更し、洋画・日本画の最低出品サイズを20号から10号に引き下げ、版画は下限サイズを撤廃。制作・出品しやすい環境を準備すると共に、サイズを小さくすることにより、地方からの出品者にとっては特に深刻な搬送費の問題が少しでも軽減されるよう配慮した。審査はサイズに関係なく同じ条件のもとに行われ、全作品が賞の対象になる。若手作家の支援についてはかねてから注力しており、出品料減免制度や若手作家専用の賞を設置。また会場の展示は、会の幹部や会員、一般などの括りで分けることはせず、展示室ごとに特徴を持たせ、それぞれの絵が最も引き立つよう工夫しているところも旺玄展の特徴だ。
  •  コロナにより中断していた「本部実技研修会」も昨年から再開。上野の本部事務所を開放し、美大卒の旺玄会員が講師を務めて石膏や静物などのデッサンや、古典技法のメタルポイントなど、さまざまなテーマで研修会を行ない、参加者から好評を博している。
  • 「現在は会員や会友を対象に行っていますが、将来的には一般の希望者も参加できるオープンな研修会にしていきたいと考えています。旺玄会は、『生涯在籍の美術大学』を標榜していますので、それをプリミティブながら実践していこうというのが現在の段階です。89回展は、我々にとっては転換ともいうべき重要な展覧会。作家の顔が見えるような、見ごたえのある作品がたくさん集まることを期待しています」(片山副理事長)
  • 第89回旺玄展は2023年5月20日~27日。企画展「“風”それは生命息吹!」も同時開催される。
(文・構成=杉瀬由希)
デッサン会の様子

(左)石膏像

(右)イーゼル

(左)メタルポイント実習風景

(右)メタルポイント作品

第89回企画展「“風”それは生命息吹!」

(左)中原慶也

(右)堀部莞爾

(左)中村多美子

(右)井上貴世香

(左)山下百合子

(右)酒井勇一 (2枚組)

(左)長沼美穂子

(右)平松康弘

(左)喜多廣志

(右)林加代子

清島義司 「ぜんまいじかけの蛸、出現」(アキーラコンテスト2022入選)

清島義司「どこへいくの」(飯田弥生賞入選)

公募情報
旺玄会
第89回公募 旺玄展 ※終了致しました。
  • 搬入
  • 2023年5月8日(月)~2023年5月9日(火)
  • 会期
  • 2023年5月20日(土)~2023年5月27日(土)
  • 会場
  • 東京都美術館(東京都台東区上野公園8-36)
  • 巡回展・地方展
  • 名古屋展 … 2023年6月28日(水)~7月2日(日)、愛知県美術館
  • 大阪展 … 2023年7月12日(水)~17日(月)、和歌山県民文化会館
  • 受賞作家選抜展
  • 2023年11月20日(月)~26日(日) 東京銀座 あかね画廊
  • 〒104-0061 東京都中央区銀座4-3-14筑波ビル2F
  • 搬入日時
  • 2023年5月8日(月)、5月9日(火) 両日10時~16時30分
  • 搬入場所
  • 東京都美術館 地下3階 旺玄会受付
  • ※コロナ感染対策ステッカー取得
  • 出品画
  • 洋画(油彩、パステル、水彩、アクリル、ミクストメディア、鉛筆、色鉛筆、コラージュ等)
  • 日本画(含水墨画)
  • 版画(含デジタル・アート)
  • 他の公募展に未発表の作品とする。一人1部門、平面作品に限る。
  • 出品画には額縁を付ける。作品保護のため、絵面より周囲1cm以上突出していること。
  • 水彩画20号以上、版画30号以上はマットを含め18cm以内。版画の小作品については制限なし。水彩画、パステルが、ミクストメディアなど画面保護の必要なものは、樹脂ガラス(アクリル)を使用する等自己責任において処理の上出品して下さい。ガラス不可。
  • 大きさ
  • 10号以上100号まで、120号、130号(FPM)は縦可。
  • (但し、版画は下限なし)
  • 規定外の作品は受け付けない。
  • 点数
  • 5点まで。
  • 出品料
  • 3点まで9000円、以降1点ごとに2000円。
  • 奨励制度
  • 2023年5月9日(火) 時点で25歳以下は出品料無料、30歳以下は半額。
  • 地方出品
  • 出品原票、作品預り証必要書類取り寄せて作品に添付し、下記の内いずれかの旺玄会作品受付に送付し、5月5日(金)までに到着のこと。地元に適当な搬入代行会社がある場合は、その会社をご利用ください。
  • (株)川端商会
  • 東京都葛飾区堀切2-16-2 TEL:03-3691-3200
  • 彩美堂(株) 足立営業所
  • 東京都足立区南花畑4-33-7 TEL:03-5242-3701
  • (株)東美本社
  • 東京都渋谷区本町5-30-12 TEL: 03-3376-8148
  • ヤマト運輸株式会社
  • 東京美術品公募展支店
  • 東京都江東区東雲2-2-3 東雲ビル2階 TEL: 03-3527-6683
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